Android's Tear 1

[Android’s Tear]



彼はもうどの位そこにいたのだろうか

すっかり寂れた博物館の一角に置かれたまま

訪れる人もなくただ静かにその場所に存在していた





今から数十年前に一世を風靡したロボットMⅡ0001

人間型ロボットの始まりで愛玩用に作られた


その頃の人類は飛ぶ鳥を落とす勢いで人生を謳歌し

怖いものは何もない的に文明を進化させ

宇宙開発にも成功し、どんどん宇宙までをその手におさめていた



そんな時に「愛玩用」として開発されたのがMⅡタイプのロボットだった


人類誰もが好きになる美しい容姿とスレンダーな体

友達や恋人の代わりになるために「服従」というプログラムが組まれていて

一時期爆発的人気がでて富裕層の間では誰もが侍らす程だった



しかし人間は我儘なもので「服従」するだけの綺麗なもの・・・

そんな特色しかなかったMⅡはすぐに飽きられてしまった

またそんな時に人類には不治の病が流行り出して

愛玩だけのロボットなど必要とされなくなったのだ



0001はいわゆるサンプルとして研究所に保管されていた

そしてこのロボット博物館に寄贈され現在に至っていた



宇宙からやってきた未知の病原菌により

人類はバタバタとその数を減らしていく

そして今では日々生き延びていくのがやっとの

生活を送る人々がほとんどだった



そんなある日

閉鎖されて誰も寄り付かないロボット博物館に

人影が入って行った



「あ・・・いた・・昔の記憶どおりだ・・

こんなところに長い事閉じ込められてて可哀そうに

今出してやるからな・・・」


1人の男が0001の展示ケースのガラス戸を開ける



博物館は今ではセキュリティすらかかっていない状況で

閉鎖されているのにも関わらず

浮浪者達の寝床として利用されたりしていた



0001の展示室は中二階にあり気づかなかったのか

それとも人間そっくりの姿に不気味さを覚えたのか

偶然にも手つかずで綺麗なままで

誰も侵入した形跡がなかったのだ



「うん・・・少し電気系統が劣化してるみたいだけど

ちょっといじってみれば治りそうだな・・・

バッテリーあたりの劣化がひどいけど

代用品ならいくらでもあるから大丈夫だろう」



男はそう呟くと小柄な体に0001をかついで博物館から去っていった・・・


続く
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Android's Tear 2

[目覚め]   0001side



気が付いたら

どこかの家のリビングにいた

ワタシは・・・博物館で永遠の眠りについたはずだったのに・・

なんでここにいるんだろう・・・



「あっ!!!!目が覚めたみたいだ・・壊れてないかな?」


人間の声がする・・・

ワタシは状況が把握できなくて

ぼんやりとしたまま声の方をむいた



「目があいた顔・・・そっくりだ・・なんか生き返ったみたい」


目の前にいるのは男

年齢からいうと・・・30前くらいか・・

見た目はもっと若いけど肌の状態から20代後半だと推測する



その男はワタシの顔をさっきから見つめて

「そっくりだ」と呟いていた



「なまえ・・なんですか?」

相手はワタシが名前を問うたので

ビックリして飛び上がりそうになっている



ワタシは愛玩用に開発された・・・

人間に尽くすためにプログラムは組まれている

そんなに驚くことないだろう・・・変な人間だ・・



ワタシはもう一度笑顔を添えて聞く


「あなた・・・お名前はなんですか?」

「顔・・・そっくりだと思ったら・・声まで似てるんだ・・」



男は涙で溢れそうな顔をくしゃとゆがめて笑顔をつくる

人間って時々分からない表情をする・・・

そういう時って心の中を読み取るのが難しい

泣いているのか笑っているのか・・

どちらでもなくどちらでもある


「俺・・・シウミン・・・しうちゃんって呼んでみて」

「しうちゃん?」


ワタシの一言で目の前の男・・シウミンは泣きだした


こういう場合はどう対処するんだっけ・・・

錆ついたと思われる組み込まれたプログラムから

こういう時の対処の仕方を引っ張り出して来た



ワタシは泣き崩れるシウミンの横に移動して

黙って頭をやさしく撫でた・・・



「ルハニ・・・会いたかったよ・・・」


『しうちゃん』はワタシに抱きつくと

しばらく大きな声を出して泣き続けていた








[過去 ]  シウミンside






俺の大事な恋人のルハンが逝ってしまって1年が過ぎた


逝ってしまった後

しばらくは

2人で行った旅行のホログラムを見たり

写真を見たり・・・

いろいろと気を紛らわせようと努力をした


ルハンが逝く時に自殺はしないと約束した

ルハンは病気で死ぬ・・・

俺が自殺をすると

あの世では、いる場所が違ってしまって

会えなくなると言われたからだ


不治の病に侵されたルハンにも

思うところがあったのだろう

でも1人はあまりにも寂しすぎて

猫でも飼おうかと思った時

ルハンの言っていた一言を思い出した










「俺さ・・・昔に流行った人型ロボットにそっくりなんだって」


「お前みたいな美形なロボットなんて・・・何に使うんだよ」



「ペットみたいな? 愛玩用だったらしい・・・

大学の時に教授に言われた」



その話をしてからしばらくして

ロボット博物館に展示してあると聞いて2人で見に行った




博物館自体はすでに閉鎖されていたが

まだ廃屋になる前で

大学教授からの紹介状を持っていけば

中に入る事ができたのだ



そして自分に似ているとされるロボットと対面したルハンは

ものすごく不思議そうな顔をして見つめていた


「目があいてないから・・どの位似ているか分からないけど

そっくり・・と言うよりは兄弟ぐらいかな?」


俺の言葉にルハンは小さく頷いた



「しうちゃん・・・こいつが俺そっくりでも見分けつく?」


ルハンが悪戯っ子のようにニヤリと笑いながら聞いてきた



「ああ・・・見分け位簡単につくさ」

俺は自信満々に答える



「なんで? そんなに自信満々なんだよ」

不服そうな顔をしてルハンは可愛く唇を尖らせた




「目を見れば違いが分かるさ」


「目?」


「お前が俺を見つめる目にはハートが浮かんでいる」


「あ・・・」

ルハンが恥ずかしそうに笑い


「じゃあ後ろ姿だったら見分け付かないだろう?」


「分かるよ」


「どうして?」


「俺のルハンを求める『本能』で嗅ぎ分けられるからさ」


「何言ってんだよ・・・バカ・・・」


ルハンはそう言うと俺を優しく抱きしめる



お互いにバカバカと言いあいながら唇を重ねあって

お互いの気持ちを確認し合う・・・・・










俺の大事な人・・・

ルハンさえ側にいてくれれば他に何もいらない

そんな幸せで満ち溢れていた日々はもう戻らない・・・






続く

Android’s Tear 3

[ルハン]   0001side



『しうちゃん』というワタシの新しいご主人は

しばらく泣き続けてからワタシから離れた



油切れ状態で上手く回らなかった節々も

ワタシが目覚める前に手入れをしてくれたのだろう

頭の中も潤滑が上手く回ってきたようだ・・・・

ようやく色々と考える事ができる




「ルハニ? 誰ですか?」


ワタシの問いに『しうちゃん』恥ずかしそうに答えた


「お前そっくりなやつ」



なぜ顔を赤くして答えるのだろうか・・・

ワタシが首をかしげるようにすると

『しうちゃん』は思い出したかのように

ホログラムを作動させた






「しうちゃ~ん!!!!猫がいるよ!!!!」

「ルハナ~待てよ~今撮ってるんだから」

「ねこ~!!!!食べ物あげるから待って~」

「ルハナ~」



立体画像の中で金髪の若い男が笑っている

この男がワタシに似ているというルハニなのだろう

『しうちゃん』は撮影側のために時々しか映らないようだ



いつの間にか外は夜になっている

窓ガラスが鏡のようにワタシの姿を映していた

その姿を観察し分析してみた

やはり『しうちゃん』の言うように

ワタシは『ルハニ』に似ている・・・

だけどワタシは映像のようには笑った事がない




ガラスに映った自分の顔を見て

先ほどみた映像のような笑い方をしてみた



「しうちゃん?」

そのほほ笑み方をして映像の中の男の様に声をかけてみる



『しうちゃん』はワタシの笑いかけに涙を流している

そしてワタシに『ルハン』という名前をつけてくれた




続く

Android’s Tear 4

[繰り返し]    0001side





『ルハン』という名前を貰ったワタシは

『しうちゃん』が外出中は家で留守番をしていた



『ルハン』が『ルハニ』『ルハナ』と同じ意味だと学習し

映像に移っていた『ルハナ』は『しうちゃん』の恋人だという事も認識した



ワタシが映像の中の『ルハン』と同じような表情をしたり

同じような口調で話をすると『しうちゃん』は驚きながらも喜んだ



ワタシはその『しうちゃん』の喜ぶ姿を見たくて

留守番をしている間は何度も何度も映像のルハンを見て

その言葉遣いや表情、仕草を学習する日々を続けていた



このころのワタシは『しうちゃん』の笑顔を見るために

何でもできそうな気持だった・・・

どうしてそんな気持ちになったか

当時はまだ理由が分からないでいた












[現在]   シウミンside




気まぐれに持ち込んだルハンに似たロボット・・・


そいつは人間の愛玩用にプログラムされていたためか

俺の心の中の要望を口に出さずとも叶えてくれる



最初はルハンに「似ていた」だけなのに

今ではルハン本人ではないか・・・

そう思えざる負えない事が増えた



まるでルハンが生き返ったようで・・・うれしい反面

これはルハンのコピーで本人ではない・・

そういう感情が彼を拒否してしまう




1人で生きていくのが辛くて

博物館から持ち出してきたが

複雑な心境で

つい2人っきりの時間を避けてしまうようになった


久々に彼と会うと

小さな仕草までが本人にそっくりになっている

このロボットがいかに優秀なのか・・・

嫌というほど実感した



ルハンそっくりの顔で

寂しさを訴えられると

自分の中での葛藤が

簡単に崩れ去るのを感じる




しかしダメだ・・・こいつは俺のルハニじゃない・・・



ルハンという名前まで相手に付けて置いて

まだ本人に操だてしてる自分におかしくて笑ってしまう




でももう俺にも時間がない・・・

最近体調が悪いと感じていたが

とうとう皮膚の柔らかい部分に湿疹が現れた






ルハンが発病した時と同じ・・・



もうすぐあいつの側に行けるのかと思うと

目の前のルハンに申し訳ない気もしてきた




俺の最期の願いを聞いてもらうために

俺たちは2人の思い出の場所を旅する事に決めた





続く

Android’s Tear 5

[旅]   0001side



「しうちゃーん!!!!!魚がいるよ~」


ワタシは映像に残されていたルハンを事細かく分析し

彼だったらどのような行動や表情をするのかを実践している

『しうちゃん』はワタシに最高の笑顔を向けてくれる

そしてワタシはその笑顔に満足しこころが満たされてる

ワタシに『こころ』というものが存在すればの話だが・・・



『しうちゃん』はワタシに

もうすぐ人類は滅亡すると伝えた


「滅亡?」

「ああ・・・俺たち以外に人間を見てないだろう?」



たしかに旅を始めてから他の人間を見ていない

人間が生活していただろう建物を宿代わりにして

2人で車を動かして移動しているが

ガソリンスタンドにはガソリンが残っているのに

それを使う人間がいないのだ



まだ都市部に行けばチラホラと姿は見るが・・・・



ワタシと『しうちゃん』は自然をいっぱいに感じて

毎日笑って楽しい時間を過ごしていた



旅を始めてから少し経つと『しうちゃん』の体調に変化が起きてきた


「ルハン・・・もう旅も終わりだ・・俺・・歩けなくなってきた」



どうしても行きたい場所がある・・・そう言って『しうちゃん』は

車椅子に乗ったままワタシをその場所に連れて行った




色々な花が咲き乱れている丘にある大きな木の根元

そこに小さな石碑があった



ワタシはそこが『しうちゃん』の大事な人の墓だと気が付く


そう


ワタシにそっくりな『ルハン』が眠る場所



『しうちゃん』はワタシに

自分が死んだらその場所に埋めてほしい・・・・そう頼んだ


体のところどころに現れたきた湿疹を見せて



「俺・・・発病したんだ・・・この病気は治らない

後はただ衰弱して死んでいくだけなんだ・・・」

ワタシは衝撃で言葉が出ない


黙ったままのワタシを見て

『しうちゃん』は申し訳なさそうに呟いた



「ここには俺の愛する人が眠っている・・・だから

俺が死んだらここに埋葬してほしい・・・・

その為に君を博物館から連れてきた・・・ごめん」



ご主人さまの命令がワタシの中にインプットされる

ワタシは微笑みながら頷く


「大丈夫だよ・・しうちゃん安心して・・・・

必ず望みは叶えてあげるからね」




ワタシと『しうちゃん』の楽しい日々も終りが近づいている

その事を考えるとなぜか胸が痛くなってくる



ワタシには心臓というものはないはずなのに・・・なぜだろう・・


ワタシのご主人さま『しうちゃん』は

それからすぐに寝たきりになり

ワタシに「ありがとう」と言う言葉だけを残して

逝ってしまった・・・・・・・・






続く
プロフィール

宗文san

Author:宗文san
るーみん大好き宗文です。2人の幸せを祈ってます。ここでは2人の妄想話が主になります。BLが苦手な方は読まずにお帰り下さい。

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