鹿とむしゅたー2

[鹿とむしゅたー] 2


カフェテラスで友人達と別れてから

ルハンは下宿に戻ってハムケツ写真集を堪能しようと

いつも通らない公園を近道するために通った


するとカラスがいつもより多く飛び交っていてうるさい

生ゴミでも誰か捨てたのか? と考えながら歩いていると


うわっ!!!!!!


何か茶いろいものが足元にあって思わずつまずきそうになった


ルハンは運動神経が無駄にいいので

その障害物を蹴飛ばすことなく上手く避けられたのだった



何だ??????



良く見るとその茶色いものは小動物だった

カラスに襲われたのか背中に突かれた跡があり血がにじんでいる

恐怖に動けなくて小さくなってふるえている


「ハムスターのような・・・でもちょっとでかくないか?」

ウサギぐらいの大きさのハムスターを

ルハンはハンカチで大事に包み、更に自分のコートの内側に入れて

大切に下宿まで連れて行った


その小動物はよほど弱っているのか抵抗することもなく

ルハンにされるがままで、ぐったりしたまま小さく息をしていた




「すっげ~かわいい顔している」

ハムスターを机に置いて傷口に薬を塗ったり

汚れている所を蒸しタオルで拭いてあげたりしたら

薄汚れていた状態からとても綺麗なハムスターが現れた


ルハンが「大丈夫だよ、怖くないからね」と言いながら

お世話をしていたら

ハムスターは言葉が通じたように暴れる事を止めた


大きな黒々とした瞳でルハンの事をじっと見つめる

さっきレイからリンゴを貰ったのを思い出し

小さく切ってハムスターに渡してみる


小さな手に持たせると

クンクンと匂いをかいでカリっと一口食べる


のどが渇いていたのか、お腹がすいていたのか

そのリンゴをシャリシャリと夢中で食べた

小さな手で一生懸命にリンゴをもって

口いっぱいに夢中で食べる姿をルハンは目じりをさげて見つめる

ひとつ食べ終わると ルハンを見つめて寂しそうな顔をする

ルハンはニッコリとほほ笑むと次のリンゴを手に持たせてあげる

ハムスターがおなか一杯になるまで、そんな事を数回繰り返した



「お前本当にかわいいなぁ・・・」

ルハンはその瞳に見つめられて萌え死ぬんじゃないかと思った



「お前俺と暮らすか?」

自分でも予想もしなかった言葉を.ルハンが呟いた


ハムスターは大きな瞳でルハンの事をじっと見つめ

ルハンの言葉が分かったかのように


ぺこり


ハムスターがルハンに向かってお辞儀をした・・・



その可愛らしさにルハンは心臓が止まるかと思ったのだった


その日からハムスターとルハンの共同生活が始まった
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鹿とむしゅたー3

[鹿と むしゅたー] 3

ルハンには小さいころより不思議な能力があった

祖母は当時田舎に住んでいて

そこは敷地内に裏山などがあり自然に囲まれていた

家に遊びに行くと、いつもルハンは小動物たちに懐かれる

動物達の言葉は分からないが、その表情から意思の疎通が出来、

動物達はルハンの言葉が理解できた


その様子を見ていたルハンの祖母は、一族の言い伝えを教えてくれた


「うちの御先祖様は、人間になった鹿を嫁にもらった事があり、

わが一族には人間以外の血が混じっているんだよ。

ルハンのその能力も先祖がえりの一種なんだろうね・・・」



だからといって凄い能力でもなく

街中に住んでいると猫や犬に懐かれたりする位で

自分でもすっかり忘れていたものだった


拾ってきたハムスターに「むしゅたー」と名前をつけて一週間

あまりの可愛らしさに学校に行くことすら忘れ

毎日お世話するのが楽しくて仕方なかった


むしゅたーはルハンの言葉が分かるようで

ルハンが話しかけると

そのつぶらな黒い瞳でじっと見つめ

最後にはコクンとうなずく

そしてはにかんだ様に俯いたりするのだった


その様子を見るだけでルハンは萌え死ぬんじゃないかという位

体がぞくぞくし、そのイケメンと言われる顔を残念なくらいに

破顔させて喜ぶ



食事はルハンの食べている皿から

直接もらって食べるようになり

ルハンと同じベットに眠り

そして傷が治ってから一緒にお風呂まで入るようになった


その切っ掛けは

ルハンがたまたま

ドアをきちんと閉めないで風呂に入っていたら

ちょこんとドアの隙間から むしゅたーが覗いてて

気づいたルハンが

「むしゅたーお前も入りたいの? おいで気持ちいいよ」と声をかけると

トコトコと中に入ってくる

風呂場の床が濡れていたので滑りそうになったけど

転ぶ前にルハンによって救出されて

大事に手のひらに乗せられて湯船に入った



ほわわわわわわ~


むしゅたーが初めて湯船に入ったのを目の前で見たルハンは

その無防備で幸せそうな顔をみて胸がキュンとした


そして気づかないうちに、むしゅたーの口にキスをしていた


キスをされたむしゅたーは瞳を大きく見開いたままルハンを凝視している

その様子も可愛くて「むしゅたー本当に可愛いな・・むしゅたー好きだよ」

ルハンの言葉にむしゅたーは視線をそらして俯いた

その頬が赤くなっていたのをルハンは気づかなかった



ジリリリリリリリリ~!!!!!!


目ざましの音がなる

昨夜友人達から散々メールやカトクが来ていて

そろそろ大学に行かないとまずいだろうと思い始め

ちゃんと起きようと目ざましをかけていた


あわてて目ざましをとめる


「今日は・・学校に行かないとまずいかな・・」

布団の中でそう考えながら起きようと体の向きを変えた・・その時

ルハンの視界に何か違和感を感じるものが入り込んできた


え?


あまりにも信じられなくてもう一度目を擦って見直してみる


マジ?


ルハンの隣に知らない少年が眠っていたのだった

鹿とむしゅたー 4

[鹿と むしゅたー] 4


ルハンは少年が裸だということに気づき

思わず自分の姿を確認する

そしてパジャマを着ている事に安心するが

あまりの想定外の事に頭が真っ白になっていた


隣のルハンが慌てて動いたために

少年が目を覚ました


少女かと思う位可愛い寝顔だったけど

瞳を開けると黒目がちでまた可愛らしさが倍増されて

その瞳はぼんやりとルハンを見つめている



「お前・・誰?」

ルハンの問いかけに少年は数秒キョトンとしていたが

すぐに自分の体をみて驚愕の表情で叫んだ




「僕・・・僕・・・ニンゲンになった~!!!!!!!」


ニンゲンになった~って・・え?


ルハンが驚いて少年を見ると少年は泣きそうな顔で自分を見ている


「お前・・・もしかして・・むしゅたー・・なのか?」


少年はルハンの問いかけに不安げにコクンと頷いた







~その頃 ハムスター国 王宮~


王宮の花が綺麗に咲き誇る庭園のテーブルに

ハムスターの姿をした人間型の生き物が2匹座っていた



ここは童話界と人間界の間に属する世界で

いろいろな動物が統治しているそれぞれの王国が存在していた

人間界へも行きやすい立地条件のため

時々冒険をしに行く輩も存在したが

国の中では人間のように振舞っている住人も

人間界に行けばただの動物になってしまう

時々神様の気まぐれで人間になれる住人もいたが

それにはいろいろな条件が必要だったので

ほんとうにそれは稀なケースだったのだ




「シウスター王子・・本当に人間界に行ってしまったけど

大丈夫なのでしょうか・・・私は不安でたまりません」


王子の誠実な執事のチェンが力なく呟くと

占星術師であるスホがカードを並べながらほほ笑んだ


「大丈夫です。王子には吉のカードしか出てません・・

それよりも昔の恩人を捜しに行ったんですよね

見つかるかどうか・・・占ってみましょう」


シウスター王子が子供のころ

好奇心に負けて人間界に行ったことがある

(もちろん執事のチェンも護衛としてついて行った)

その時にネズミ捕りの罠に捕まり

死にそうになっていたのを人間の少年に助けられた

その少年の話す言葉は人間のものだったが

不思議な事にチェン達にも理解できた




シウスター王子はその時に助けられた少年が忘れられなくて

いつか大人になってもう一度会いたいと願っていたのだ



「あの少年なら私達の言葉が分かるようでしたから

お礼を言っても通じると思いますが・・・・・

王子は会ってお礼を言って・・・

そのあとどうするつもりなんでしょう」


そこまで言うとチェンは口を閉ざした

シウスター王子が人間の少年に異常に執着していた・・

それは何年たっても変わることがなかったのだ


ここにきて王子に縁談の話がたくさん持ち込まれている

多分その事と今回の人間界行きの話しは無関係ではない・・・


「王子は恩人の少年に恋していたんでしょうね・・・カードに現れてます

 おや? 何か王子の身辺で起きてます・・それが何かまでは分からない・・」


スホはそう言うとカードをもう一度シャッフルして再度並べ始める


「うーん・・何だろう・・何かが起きてます・・でもチェンさん・・・

最後は王子は幸せになると出てます・・・だから大丈夫ですよ」


スホの占いは最終的には当たっていることが多いので

『最後は王子は幸せになる』という結果を聞いて

チェンはため息をつきながらも

何とか心を落ち着かせようとしたのだった

鹿とむしゅたー 5

[鹿と むしゅたー] 5


~ルハンの下宿~

「とりあえず俺のものでいいから服を着ないとだな・・・」

裸のまま毛布に包まっていた少年は、出された下着と服を

ルハンに手伝ってもらって身につける


「お前口がきけるようになったんだな・・もしかして名前あるのか?」


「僕・・シウスターと言います」


「ちゃんと名前あったんだな・・・

ハムスターだから『むしゅたー』なんて

勝手に名前つけちゃったけど・・・

俺・・小さい時ハムスターって発音できなくて

はむしゅたーって呼んでたんだ・・その名残」

ルハンが恥ずかしそうに笑った


その姿を眩しそうにシウスターは見つめて

「むしゅたーでもいいです」と答えた


「いや・・シウスターだから・・しうちゃん・・しうちゃんって呼ぶよ」



(はむしゅたーが罠にかかってる・・・大丈夫? たしゅけてあげるからね)


恐怖で震えていた時に突然聞こえてきた優しい声

そして優しい笑顔をむけてきた人間の少年・・・

昔の思い出がシウスターの頭に瞬間的によみがえった

きゅん・・・シウスターの胸が疼く・・・


「それにしてもハムスターが人間になるとは・・・

俺も初めての経験だよ!! こんなこと誰も信用しないし・・・

さて・・これからどうしよう」


どうしようと言いながらも

ルハンはちっとも困った様子も見せずに楽しそうだ


「まずは・・・しうちゃんの服買いに行こうね」 とシウスターにほほ笑んだ


ペコリ


シウスターはルハンに向かってお辞儀をする

人間の姿になっても可愛いのは変わらないな・・

ルハンはそう思うと嬉しそうに目じりを下げる


そういえば・・・・

忘れていた記憶がルハンによみがえってくる


小さいときネズミを助けた記憶があった・・・

でも今考えるとあれはネズミじゃなかった・・・

自分でもはむしゅたーって言っていた・・・

あのハムスターは足に怪我をしていてバンドエイドを貼ってあげた・・


そうだ

その時もペコリとおじぎをしてから逃げて行った・・・

すっかり忘れてたけど・・・ちゃんと家に戻れたのかな?



「俺ってハムスターに縁があるんだな・・・

さあ朝ごはん食べて買い物に行くぞ!!!!」

ルハンがそういうと朝食を作るためにキッチンに向かった


その後ろ姿をシウスターはじっと見つめていた

鹿とむしゅたー 6

[鹿と むしゅたー] 6


平日だったが弘大の街は学生街というのもあって

たくさんの若者で賑わっていた

シウスターは人間の街を歩くのが初めてだったので

興味津津であちこちキョトキョトと落ち着かない

隣のルハンの腕をぎゅ~っと掴んで歩いている



その可愛らしさにルハンの顔が綻ぶ

歩きなれてない為によろよろする姿を支えるために

いつの間にか腕は腰に回っていて

周囲のだれが見ても美男美女カップルに見えた



シウスターが人間になった姿はとても可愛らしく

通り過ぎる男子が必ず振り返る程だった

ルハンは裸を見たから男の子だと知っていても

大きな瞳に白い肌、ぷくりとした赤い唇・・・どれをとっても

かわいい女の子に見えてしまう

ルハンより小柄な体系・・・

サラサラのショートヘアーもルハン好み

そうシウスターの姿かたちはルハンにとってドストライクだったのだ



弘大のショップで男のものと言うよりも

ユニセックスな服やスニーカーなどを数点購入し

ショップの店員にもカップルに見られて

ルハンは最高に機嫌が良かった

シウスターも恥ずかしそうに下を向いて

ルハンの腕をつかんだまま

その姿もルハンの顔が綻んで仕方ない

人間のカップルと同様に楽しそうにあちこち歩き回っていた



これってデートだよな・・・ルハンが心の中でほくそ笑む


しばらくするとシウスターの表情に疲れが見えてきた


「しうちゃん・・どうしたの? 疲れた?お腹すいた?」

ルハンの顔を見つめてコクリとうなずくシウスター



超かわいい・・・


思わずデレデレになりそうなのをなんとか我慢して

「じゃあ・・・ハンバーガーでも食べよう」と

美味しいと評判のバーガーショップに入って行った



モグモグモグモグ



ハンバーガーを両手に持って

口いっぱいに詰め込んで食べているシウスターは

ハムスターそのままの姿でルハンに最高の萌えを提供してくれた


「しうちゃん・・・可愛いね・・・もっと食べていいよ」


?


ルハンが食べる手を止めて自分を見つめているのに気付き

目を丸くして不思議そうに見つめ返すシウスター



「しうちゃん・・美味しい? これも食べていいよ」

ルハンの言葉に

「こんなに美味しいもの初めて食べました」と

最高の笑顔で答えるシウスター

その頬にケチャップが付いている


ぺろっ


ルハンは無意識にその頬のケチャップを舐めとっていた


!!!!!!!!!!!!!!

ドキドキドキドキ

シウスターの心臓が今にも壊れてしまいそうに激しく波打つ


そんなシウスターにルハンは気づかないで

相変わらず優しい笑顔を向けてくる



神様・・・僕・・幸せすぎて今にも死にそうです・・・どうしたらいいんですか?


シウスターはそう心の中で呟くと

恥ずかしさを隠すかのように一生懸命にハンバーガーの続きを食べ始めた

鹿とむしゅたー 7

[鹿と むしゅたー] 7




シウスターはハムスター王国の王子だった

ハムスターの国は平和で穏やかだったのだが

王の一族は病気にかかりやすく短命だった


なのでシウスターは他の王国の血を取り入れるために

適齢期になると婚姻話がたくさん寄せられるようになった


でも彼は子供のころに助けてもらった人間に淡い恋心をいだいており

お見合いする決心もつかないでいた


とうとう年齢的なタイムリミットを迎え

シウスターは自分の気持ちに決着をつけるために

人間界に行くことにした




出会ってお礼を言ってそのまま戻るつもりだった

なのに神様の気まぐれか人間の姿になり

大好きな人と楽しい時間を過ごせている


大好きな人の名前も分かった

そのルハンも自分の事を可愛いと言ってくれる



もう思い残すことはない・・・王国に戻って国のために結婚しても

この数日の思い出を胸に生きていけるだろう


あと数日・・・神様が与えてくれた時間はもう残り僅かしかない







ルハンはシウスターの左足にあった傷跡を見た時に

何か引っかかる気持ちを感じていた

拾った時にカラスに突かれた傷とはまた違い

かなり昔に出来た傷のようだった




それにハムスターが人間の姿になったという驚愕の出来ごとも

少しは驚いたけどすんなり受け入れていた自分に驚いていた


可愛いハムスターが

自分好みの超かわいい子になっていた

その事実の方が勝ってしまい驚くよりも嬉しくてたまらない



今日の弘大のデートも楽しかった

シウスターがずっとこのまま人間でいるなら

自分の恋人にしてしまいたい位

ルハンもシウスターに魅かれ始めていた・・・・

鹿とむしゅたー 8

[鹿と むしゅたー] 8


~大学のカフェテリア~

「最近ルハンの姿見えないけど・・・どうしたんだ?」

クリスが雑誌をめくりながらタオに聞く


「うーんタオは~ハムケツ写真集あげてから2週間くらい見てない」

カフェテリア特製のシュークリームを頬張りながらタオが答えた


「レイはルハンの事見たか?」


「いや・・・僕も・・・授業も出てないよね・・・誰も知らないなんて珍しいね」

レイがミルクティを一口飲んで思い出したように言った

「そーいえばさっきルハンの追っかけの子が大泣きしてたよ」


「ルハンは何人か追っかけファンいたなぁ・・・そういえばタオお前何か聞かれてたな」



あっ!!!!!!!!


タオはクリスに言われて慌てて口の中のシュークリームを飲み込んだ


「そうそうその子から聞いたの!!!!じゅーだいな話!!!!

シュークリーム見たら忘れた~!!!!!!」


クリスが怪訝そうな顔をしてタオを見つめる


「昨日ねルハンが超かわいい子と弘大をデートしてたんだって!!!!」



ぶっ!!!!



クリスが口にしたコーヒーを思わず吹き出した


「たいちょー汚いなぁ~タオその子から証拠写真貰ったよ!!!!見て」

タオがスマホを操ってもらった写真を表示した


「うわっ!!!!可愛いじゃないか!!!あいつロリコンだったのか?」

写真はルハンがshortヘアーの眼のくりくりした可愛い少女と

ハンバーガー店で食事をしている様子の盗み撮りだった


「るうちゃん嬉しすぎてすごく顔が崩れているよ・・・

本当にこの子の事好きなんだね」

え?

レイがタオのスマホをのぞき見して、驚いたように小さく呟いた

(お・・う・・じ・・)


「え? レイってこの子知ってるの?」

タオの言葉にクリスも驚いてレイの顔を覗き込む


「ううん・・ちょっと知り合いに似ていただけ・・」


そう言うと「僕ちょっと用事思い出したから帰るね」と

レイにしては珍しく走って去って行った 

鹿とむしゅたー 9

[鹿と むしゅたー] 9


初夏を迎える爽やかな朝だった

相変わらず大学の友達からのカトクやメールが来てたけど

すべてを無視してルハンはシウスターと過ごすことにした



「今日はお天気もいいし遊園地に行こう!!!!!」

朝食のトーストを食べながらルハンが思いついたように叫んだ


「ゆうえんち?」


「しうちゃんなら多分好きだよ・・俺は苦手なんだけどさ・・・

デートと言えば遊園地が鉄板だし~今日もデートしよう!!!」


トーストを両手で持って不思議そうに首をかしげ、

ルハンの事を見つめるシウスター


(うわっヤベっ本当に可愛すぎて俺おかしくなりそう・・・)


表情が緩んでくるのが分かってルハンは慌てて口を引き締めた

「すぐにでも出かけるからねっ!!!ほらっちゃんと食べて!!!」


ルハンがシウスターのおでこをチョンと突っつくと

シウスターは慌てて残りのトースターをもぐもぐと食べ始めた





「うわっ!!!!すごい~!!!!」

遊園地に着くと、シウスターは眼をキラキラさせて

絶叫マシーン系をあれこれと見つめている


多分ハムスターの本能で回転物とか大好きなんだろうな・・と

思って連れてきたが

興奮している姿を見るとそんな所も可愛くて仕方ないルハン



「さて・・・どうしよう・・俺絶叫系大っきらいなんだけど・・・

しうちゃん1人で乗せられないし・・・」


そう呟いて隣のシウスターの方を見ると

早くどれかに乗りたいという意思表示で瞳をキラキラさせながら

ルハンの事を可愛らしく見つめている



あーっ!!!!もう何とでもなれっ!!!男ルハン頑張れっ!!!!!


心の中で自分で自分を励ましながら

ジェットコースターの列の最後尾に並んだ・・・・






「ルハン・・・すごく楽しいです・・」

ジェットコースターとフリーフォールに乗った後

腰が抜けた状態でベンチに座っていたルハンに

シウスターが最高の笑顔を向けてくれた


きゅ~ん

ルハンの胸が甘く疼く・・・・


あの恐怖の代償がこの笑顔なら・・・俺なんでも出来そうだ!!!!

しうちゃんの事本気で好きみたいだ俺・・・



.ルハンはシウスターに笑顔を返すと

恐怖に打ち勝つように拳をぎゅっと握る


これから最後の大一番が待っている

ルハンが一番苦手としている観覧車に乗るのだ・・・



「かんらんしゃ・・って凄い~あんなに遠くまで綺麗に見えます」


少しずつ上昇していく観覧車の中でルハンは必死に恐怖と闘っていた


「しうちゃんって・・・回転したり高いところに行ったり全然平気なんだね」


何か会話をしないと恐怖で叫びそうだ・・・

ルハンは思いつく話題を次から次へと話しだして

なんとかゴンドラの中にいることを忘れる努力をしていた


「そう言えば・・・しうちゃんって俺と会うの初めてじゃないでしょ?」


え?


ルハンの前から気になっていた疑問が口から飛び出した


シウスターが黙ってルハンの顔を見つめる


「その足のけがの跡・・」


「・・・・・・」


「俺・・・ガキの頃・・はむしゅたーとしか言えなかった頃

田舎のばあちゃんちで罠にかかったハムスターを助けたことがあるんだ」


「・・・・・」


「その時のハムスターが凄く可愛くて今でも忘れられない・・・

しうちゃんでしょ? あの時のハムスター」


ルハンを見つめるシウスターの瞳から涙があふれ出てきた


「なんで・・なんで僕だって・・思うの? 」


「なんでだろう? 説明できないんだ・・・でも俺の中ではそうだと思ってる」


「ルハン・・・覚えててくれたんだ」


シウスターの言葉にルハンはニッコリとほほ笑んだ



カタン


上昇していたゴンドラが止まった


「てっぺんに着いたんだね・・しうちゃん!!!窓から確認して? ここは一番上?」


「はい・・今が一番上にいるみたいです」

シウスターが窓から下を覗いて言うと

ルハンが急にシウスターの手を握ってきた

!!!!!!!!!!!!


「しうちゃんがハムスターでも男の子でも関係ない

俺はしうちゃんが好きだ・・ずっと一緒にいたい」


ルハンからの突然の告白に

シウスターは大きな瞳を見開いて驚いていた


次の瞬間

その瞳から大粒の涙が次から次へとあふれ出てきた


ルハンがその頬に手をあてて優しく涙を指でぬぐう・・・

「しうちゃん・・好きだよ」と優しく唇を重ねてきた




神様・・・神様・・・僕はどうしたらいいのでしょうか

ずっと好きだった人が僕を好きになってくれて

ずっと一緒にいたいって・・・言ってくれて

でも

僕は・・・僕の王国は・・僕が帰らないと消滅してしまいます


せっかく実った僕の初恋・・・僕はあきらめなくてはいけなんでしょうか




シウスターは喜びと不安で押しつぶされそうになりながら

今はルハンからの愛を感じることに集中することにした


「ルハン・・・僕を2度も助けてくれました・・・・・

初めて会ったときから・・僕はルハンが好きです・・・

もう一度会いたくてやってきました・・・僕を見つけてくれてありがとう」


シウスターの言葉にルハンも瞳がうるんでくる

2人は下降するゴンドラの中で

ずっと抱き合っていた・・・・・

鹿とむしゅたー 10

[鹿と むしゅたー] 10


「王子・・・やっと見つけました・・探してたんですよ」


夜明け前の公園の片隅で

小さく膝を抱えるように座っていたシウスターに誰かが声をかけてきた


シウスターが声のする方に顔を向けると

1人の青年が優しい顔で立っている

その笑顔に浮かぶ えくぼが特徴的だった


「なんで? ユニコーンさんがいるの?」


「どうしたんですか? 王子・・・なんで泣いているんですか?」







愛する人と結ばれ最高の夜を過ごしたルハンは

そのぬくもりを確かめようと夢うつつの中

その人がいるべき場所に手を伸ばす


あれ?


そこにいるはずのシウスターの姿が見えない

ルハンは一瞬にして目が覚め

ベットから飛び起きた



夢・・・

じゃない・・・・

あまりにも好きすぎて結ばれた夢を見たのかと思ったけど

ベットの中は愛し合った行為のなごりが残っていた



「しうちゃん?」

ルハンはトイレや風呂場を覗いてみたが姿は見えない

キッチンのテーブルに紙切れが置いてあるのに気づいた



「ぼくは、自分の国にもどらなければなりません・・

ここでの出来事を思い出として、これから生きていきます

ありがとう・・さようなら・・・僕もルハンを愛しています」



「しうちゃん・・・どうして? 」


ルハンは急いで身支度をするとその紙切れを握りしめて

まだ薄暗い外にむかって飛び出していった







「僕・・・今帰らないと・・・帰りたくなくなる・・・・

だから好きな人を置いてきた・・・

でも来るときに通れた道が今通れなくなってる・・・

僕が戻らないと・・・国が消滅しちゃう・・・」


えくぼの青年は優しく見つめてシウスターの話を聞いている


「王子はいいんですか?

ルハンにサヨナラ言わないで別れても?

王子が人間の姿になれたのは

ルハンからの愛が

神様からの条件を全てクリアしたからなんですよ」



「ユニコーンさん・・・僕は・・・どうしたらいいんですか?」


シウスターは溢れた涙をぬぐうこともせずに

ユニコーンと呼ばれた青年を見つめていた・・・・









「しうちゃん・・・ダメだよ・・俺のそばからいなくなっちゃ」


子供の頃助けたハムスター・・

あまりにも可愛らしくて、

それ以来ハムスターが気になって仕方なくなっていた

もうその時には心を奪われていたのかもしれない・・・


「しうちゃん・・・どこに行ったんだよっ・・」


薄暗い外に走り出たのはいいが何処に行けばいいのか・・・


「公園・・・」


カラスに襲われていた所を助けた公園・・・

もしかしたらそこにシウスターが人間界に来た通路があるのかもしれない

そう考えたルハンは公園に向けて全力で走って行った

鹿とむしゅたー 11

[鹿と むしゅたー] 11



ルハンがまだ薄暗い公園に着くと

街灯の下に人影が見えた


あれは・・・レイ?

大学の友人のレイが誰かと話しをしている様子だ


こんな場所でこんな時間に・・・なんでレイがいるんだ?


静かに近づいていくと

レイの足もとにはうずくまった人影が見える



「僕は・・・ぼくはどうしたらいいのか分かりません

僕の国は・・直系血族じゃないと国を統治できないんです

僕の一族は病弱で短命が続いたために

跡取りが僕しかいません

だから・・僕が戻らないとあの国は無くなってしまいます」


シウスターの声がする

ルハンは耳をそばだてて会話を聞きもらすまいとしていた



「王子はルハンの事が好きでこの世界に来たんでしょ?」


「はい・・僕の初恋の人でした・・・もう一度だけ会って

昔のお礼を言ってそのまま帰ろうと思っていたんです・・・

でも・・・ダメでした」


「今も未練あるけど・・・今戻らないと僕はあの国を消滅させてしまいます


自分のせいで・・・そんな事できません・・・だからあきらめるしかないんです」


レイは黙って聞いて、ため息をひとつ吐いてから静かに話した


「分かったよ・・・王子の決意が固いなら国に戻してあげる

人間の姿になったから、来た時に利用した通路が使えなくなってるからね」


「ユニコーンさんって・・・魔法使いなんですか?」

シウスターの問いにレイは小さく笑った


「じゃあ戻るから僕の手を掴んでね」



「ちょっと待った~!!!!!!!!」

ルハンが突然2人の前に飛び出して来た


「レイがなんでいるのか知らないけど

しうちゃんを連れていかせない!!!!!!」


そう言うとレイの手から

シウスターを奪い取るようにして自分の腕の中に収める


「しうちゃん・・・ダメだよ・・俺から離れないで」

シウスターを強く抱きしめながらルハンは何度も哀願する


「ルハン・・・あのね・・王子は国に戻らないと

国自体がなくなっちゃうんだよ」


レイが諭すように言うとルハンはムキになって答えた


「そんな国知ったことか・・・

しうちゃんがいなくなったら俺は生きていけない」


「ルハン・・・ごめんなさい・・僕はこの世界じゃなくて

自分の世界に戻ります・・

そこで僕のすべきことをしなくちゃならないんです

僕の生きる場所はこの世界じゃないんです・・・」


シウスターは泣きながらも

ルハンをまっすぐに見つめて話した






「じゃあ・・・俺がしうちゃんの世界に行く!!!!!!」


え?


「しうちゃんが、こっちの世界にいれないなら・・俺が行く!!!」


「だって・・ルハン・・今の生活とか家族とか・・・」


「そんなの捨てる・・・しうちゃんのいない世界なんて存在価値なんてないもん」


想定外の言葉にシウスターは驚いてルハンの顔を見つめた


「レイ・・・お前人間じゃないんだろう? 俺をしうちゃんの世界に連れて行ってよ」


ルハンの言葉にレイは小さく笑った

「いいんですか? もう大学に行ったり家族に会ったりできなくなっても?」


「俺さ・・・ガキの時に会ったハムスターが余りにも可愛くて

その時に心奪われてたんだ・・・

俺の初恋相手も・・しうちゃんだった事になるんだ」


ルハンの腕の中のシウスターはその言葉を聞いて

嬉しそうに胸にギュっとしがみついた


「もう離さない・・・離れない・・だから俺をしうちゃんの国に連れて行って」

レイは2人の様子を見てニッコリとほほ笑むと


「ふつう人間は向こうの世界では生活できないのですが・・・

ルハン・・あなたなら出来るかもしれない・・・2人とも私の手を掴んで下さい」





~ハムスター国 ひまわり畑~



「スホさん・・・突然こんな所に呼び出して何なんですか?」

執事のチェンが、

ひまわり畑の真ん中で占い師のスホに文句をいう


「今日も良い天気ですね~

この国は常夏なのでいつでも天気ですけど」と呑気に答えるスホ

「実は先ほどカードに

 『今日の昼にこの場所で王子に関する何かが分かる』と出たので

確認のために来てもらったんです」


王子と聞いてチェンの顔が曇った

人間界に行ったまま音信不通の王子

このまま戻らなかったら直系血族のいないこの国は消滅してしまう・・・・

スホの占いではそんな事にはならないと出てたから

まだ少し希望は持っている


「それにしてもスホさんのカード占いって・・・

当たってるんだか当たってないんだか・・良くわかりませんね

でも結果は当たっているから・・・凄いんでしょうね」


チェンが苦笑しながらスホに言うと

スホは時計を眺めながら嬉しそうに答える

「さあ・・・後2分で何かが起きますよ・・何でしょうね~」



すると

ひまわり畑の上の空間が急に歪んだ


ドサッ!!!!


するとそこから何かが落下してくる

満開のひまわりの上にその塊が落ちた



「痛ってぇなぁ~!!!!もうちっとちゃんと届けられなかったのかよ」

その塊は空に向かって悪態をつく

良く見ると人間の男性だった


「しうちゃん・・大丈夫? けがしなかった?」


「僕はルハンが守ってくれたので大丈夫です・・・

ルハンけがありませんか?」

腕の中でシウスターが心配で泣きそうな顔をしている

ルハンはその顔をそっとなでると「大丈夫だよ」とキスをした


「ごめんね~穴の設置場所まちがえちゃった」

背中にユニコーンの羽をつけたレイが申し訳なさそうに2人の側に飛んでくる



「あれ? スホとチェンがいる・・」


想定外の出来ごとに

抱き合ったまま固まっているチェン達にシウスターが気づいた


その声に我に返ったチェンがシウスターの姿を見て大きな声で叫ぶ


「シウスター王子様!!!!!」
プロフィール

宗文san

Author:宗文san
るーみん大好き宗文です。2人の幸せを祈ってます。ここでは2人の妄想話が主になります。BLが苦手な方は読まずにお帰り下さい。

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