運命 5

[運命] 5

戦争はだらだらと3年も続いた

シウミン達の国は連合軍に属していたので

勝利を収める側となったが

村は空襲にあい破壊的なダメージを受け

勝ったとはいえ何も残らない戦争だった



しかし終戦をむかえて

命の助かった人々は生きていくために動き始める



スホは病弱のために出兵は免れたが

村の空襲を体験し

村人たちが亡くなっていくのを

間近に感じていた


祖父の決断により

奇跡的に焼け残った屋敷を解放し

行き場のない人々の世話をしていた

友人たちの出兵で

自分も国のために何かをしなくては・・・

そう焦っていたスホは

村の再建の手伝いをすることで

自分でも役立ってる・・・そう思えるようになった



悲惨な戦争が終わってしばらくすると

出兵していた友人たちがぽろぽろと戻ってきた

戻ってきても家族や家を失っているので

スホを頼りにしばらく屋敷に滞在し

そこから独立していく・・・そんな感じだった


チャニョルとベッキョンは早々に村に戻り

しばらくスホの元に滞在してから

2人で都会に仕事を求めて去って行った

チェンはスホの奉仕活動の手伝いをして

村に残る事になった



シウミンが村に戻ってきたのは

戦争が終わってから2年後だった

戦争中に捕虜となり

寒い国での捕虜生活で怪我をして

その怪我が原因で右足を引きずる様になった


片足を引きずりながら

村に戻ってきたシウミンをむかえたのは

かつての仲間のスホやチェンだった


シウミンは

意志の強そうな瞳を持った少年と一緒だった



それから3年が過ぎ

色んな仕事をして資金をためたシウミンは

村にcaféをオープンした


シウミンと村に来た少年はディオと言って

捕虜生活で知り合った

身寄りがなかったので終戦後に行き場がなく

シウミンが声をかけて村に連れて来たのだ


彼は料理を作るのが得意でcaféの軽食担当となった


今日はそのcaféのオープン日

スホとチェンが手伝いに来てくれた

シウミンが店を構えた場所は

かつてルハンと通信を行っていた塀の近く


それはルハンが自分を訪ねてくる時に

少しでも分かりやすいように・・・そう願ったから


シウミンは『ルハン』という名前しか知らない相手と

「戦争が終わったら会おう」という約束だけを信じて

今まで生きてきた


そしてこれからもその約束を守るために

この場所を選んで店を出したのだ



オープンして間もなく

金髪の背の高い男がシウミンを訪ねてきた


続く
スポンサーサイト

運命 6

[運命] 6



「なんかシウミン・・落ち込んでる? 大丈夫?」

「訪ねてきた男の人とずいぶん話し込んでましたね」

「僕ちょこちょこ聞こえて来たけど・・・
多分あの男の人ルハンという人の知り合いみたい」


スホの屋敷に戻ってきてから
シウミンはリビングの椅子に座ったまま考え込んでいた

少し離れたところでチェンとスホがシウミンを見ながら
心配そうにひそひそと話しをしていた

「スホさんにチェン。新作メニューなんですけど
試食してみてください!!!色々意見お願いします」

キッチンからディオが新作サンドイッチを運んできた


シウミンは今スホの屋敷に住んでいる
ディオとチェンも一緒だ(もちろん家賃を払っている)

「ヒョン・・・新メニュー作ったのですけど・・・」

ディオの言葉にシウミンはハッとしてみんなの方を向いた

「あっ・・・悪い・・今コーヒー入れるからな・・・」




「あー美味しかった。ディオって本当に料理の才能あるよね」
チェンが満足気におなかをさすりながら言うと

「今度ケーキとかも作ってみれば?」
スホも笑顔でディオにアドバイスをする

スホとチェンとディオが
楽しそうに話しをしている輪から少し離れて
シウミンがぼんやりしている

さすがに見かねたスホがシウミンに声をかけた

「店を訪ねてきた男の人ってなんだったの?
シウミンがそんなんだと僕たち心配なんだ」

シウミンがスホの方をむいて
小さく深呼吸をしてからほほ笑んだ

そして静かに話し出した

「そうだね・・・聞いてくれる?」





その金髪の男性はクリスと名乗った

「あなたはルハンを知ってますよね」

「会った事ないですけど・・・」

「私はルハンと一緒に住んでいました
あなたとルハンが塀越しに話をしていたのも知ってます」

クリスの言葉で、泣き虫の弟としっかり者の兄達と住んでいる・・・
そう聞いていたのを思い出した

「終戦から5年・・・俺たちが別れてから8年経つんです
ルハンから何も連絡がなくて・・・シウミンさんの所なら
あいつから連絡が行ってるかと思ったんですが・・・」

「僕の所にも連絡ないです・・・そもそも僕は『ルハン』の名前と
声しか知らない・・・暗闇だったから顔もよく識別できなかったし・・」

「でもルハンはあなたと再会する約束をしてました。
ものすごく楽しみにしていて
どんな事をしても生き延びてやるって・・・・」

「クリスさん・・あなた達の国は敗戦しましたよね
ルハンも出兵していたんですか?」

シウミンの言葉にクリスは少し躊躇した
しばらく考えをまとめるように上を見上げて
息をひとつ吐いてからシウミンを見つめた

「あなたなら真実を話しても大丈夫でしょう・・・
実はルハン・・俺もそうなんですが・・・スパイとして
養成されていて・・・戦争中はスパイ活動してたんです」

「・・・・」

「もともと俺たち4人・・・他にレイとタオがいるんですが
あの国に忠誠なんて持ってなかったから
戦時中のどさくさに紛れて逃げ出そうと話してました」

「他の2人は・・・連絡とれたんですか?」

「なんとか再会できました・・でもルハンだけは探しても見つからない」

「・・・・・」

「ルハンは・・いつもあなたの話をしていました
普通の生活をしていたら・・・
体験できるのかなって
いつも楽しそうに
あなたから聞いた話をしてくれました・・・」

「ルハン・・・」

「俺たちの毎日は人殺しのための訓練や
スパイ活動に役立つ訓練ばかりだったから・・・」

ルハンの事で何かわかったら
お互いに連絡を取り会いましょう・・・

そう言ってクリスは帰って行った・・・・・





話を聞き終わってスホ達も言葉を失っていた

子供の頃からスパイの養成を受けていたルハン・・・
シウミンがあの場所にcaféを開いたのはルハンと会うためだった・・
11歳からずっと塀越しの親交があったシウミンとルハン・・・

「ヒョン・・・生き延びる理由ってそうだったんですね」

ディオが顔をくしゃくしゃにしながら
シウミンに抱きついた

「ウミニヒョンの脚の怪我は
僕を庇ったためのものなんです」

「ディオ・・もういいよ」

「スホさん達に聞いてもらいます・・・
捕虜生活たがら・・怪我しても治療なんてしてもらえなくて
怪我からばい菌が入って・・・高熱が出て・・・
でも・・ヒョンは・・絶対に生き延びるって・・・
命は助かったけど・・・後遺症が残ってしまった・・・」

シウミンの背中にしがみつきながら
泣きじゃくるディオをチェンが優しく抱きしめた


「シウミン・・・大丈夫だよルハンも生き延びてるよ・・・
お前がそんなにしてまで生きようとしたのと同じで
ルハンも・・どんな事をしてでも会いに来るよ」

スホの言葉にシウミンは静かに涙を流した




それから平凡で穏やかな日常がしばらく続く・・・・

そしてcaféがオープンして2年後に
空襲で焼け残っていた塀が全て取り壊される事になった



続く

運命 7

[運命] 7


「テヨン・・・さっきから何を熱心に見てるんだ?」

高級ホテルのスイートルームで
用意されている朝食もとらずに
綺麗な顔をした男性が食い入る様に新聞を読んでいる

向かい側に座った仕立ての良いスーツを着た
これも綺麗な顔をした男性が呆れた様に声をかける


「セフナ・・・この写真の場所・・・何か知ってる気がする」

セフナと呼ばれた男性が少し顔を曇らせたが
すぐに笑顔を作ってこたえる


「もしかしたら君の失われた記憶と関係があるのかもね」


「行きたい・・・この記事だと明日にでも塀が取り壊されるって」


「・・・・・」


「連れてって・・・俺のこと知ってるやつがいるかもしれないし・・・」


テヨンと呼ばれた男性は
綺麗な瞳を目いっぱい見開いてセフンを見つめる
セフンはそんなテヨンの表情に弱かった


「分かった・・・分かったから・・・朝食をお食べ」


「うん・・・約束だからね」


新聞には戦争中に焼け残った巨大な塀を取り壊すという
簡単な記事が写真とともに掲載されていた


都会の方ではすでに分断された塀は残っておらず
小さな村の一部分だけが焼け残っていただけだった

その村は空襲にあっていたので
悲惨な記憶を払拭するために
取り壊しを村人達は望んでいたが
都会の一部権力者が戦争記念として残そう・・・
そんな事を言いだし
すったもんだの末やっと取り壊しが決まったのだ

終戦から7年が過ぎていた・・・・・





タオはクリスと共に昔住んでいた村の南側に住んでいる
終戦後にクリスと再会してから
本当の家族の様にレイを含めて3人で暮らしていた

時々シウミンのカフェにも顔をだして
シウミンやチェン達とも仲良くしてもらっていた

数日後に塀が取り壊されるというニュースのおかげで
村には外からの観光客が押し寄せていた
シウミンのcaféも忙しくてタオを構ってくれる人がいない
タオは仕方ないので1人で塀の側まで行ってみる事にした


塀の側には先客がいた

金髪の背の高い男性と
金髪でくるくる巻き毛の花柄ワンピースの女性・・・

ワンピース姿の女性の顔を見てタオは思わず息を飲んだ


「るうちゃん・・・」


まさか・・・るうちゃん? でも女の子の服着てるし・・・

タオはあれこれ考えながら声をかける事にした

「るうちゃん!!!!!」


タオの声は背の高い男性には聞こえたようで
眉間に皺を寄せてきつく睨まれた

女性はタオの言葉に何の反応もせず
男性に肩を掴まれたままタオのいる方と反対方向に行ってしまった


「るうちゃんじゃなかったんだ・・・
もしかしてるうちゃんのお姉さんとか?」

タオは深く考えずにそのまま自分の家に戻ってしまう

ルハンに似た女性が村に滞在している・・・

その事をクリスが知るのは
塀が取り壊される日の朝だった



続く

運命 8

[運命] 8



まずい・・私はテヨンの本名は知らないが

多分声をかけてきたあいつはテヨンの知り合いだろう・・・・

だからここには連れてきたくなかったんだ・・・

一応女装させてたから深く追求せずに帰って行ったな・・・




セフンは流れ出る冷や汗をハンカチで拭うと
村の唯一のホテルに急いでテヨンを連れて戻った

幸いな事に塀を見てから考え事をしていたテヨンには
タオの声は届かなかったようだった



セフンは終戦直後の闇市でテヨンと初めて会った

当時の仕事仲間の興味本位の闇市ツアーに
いやいやながら付きあった時のことだった


人身売買の店で商品として並べられていた彼の
その美貌に一瞬にして心を奪われたのだ


大枚をはたいて手に入れたその男は
記憶を失っていた

セフンはその男にテヨンという名前をつけて
自分の側に侍らせていた

戦後のどさくさに紛れて
商売がうまくいき膨大な利益を得たセフンにとって
人ひとりを養うくらいはなんでもなかったのだ


後見人としてテヨンを数回抱いた事もあった
あまりにも抱かれ慣れしているその体は
セフンを魅了するのに十分だった

ただ養われている代償として抱かれている・・
そんな感じを受けた時にセフンは抱くのをやめた

心まで欲しい・・・・

そう思ってから5年の歳月が流れて行った

最近少しは心を開いてくれているとは感じているが
セフンはテヨンの記憶が戻る事が恐ろしかったのだ

そして嫌われたくない・・・という気持ちもあり
彼の希望を叶えるような行動をとる事が多くなる

今回も「女装」という妥協点を見出して
塀の近くまで行ったのだ
もう十分だろう屋敷に帰ろう・・・・
そう言いたいのに言えないでいる自分にイライラを感じている

ホテルに戻ってからもテヨンはずっと考え事をしている

セフンは1人でワインを飲むとさっさと寝てしまった





あの塀は何なんだ・・・

見た途端に身体に電流が走ったかのような衝撃をうけた
そして自分の記憶が呼び戻されそうなのか
ずっと頭がズキズキと痛くなっている・・・

テヨンはずっと頭を押さえながら考えを纏めようとしていた


セフンは俺がこの村に来る事を嫌がっていた・・
俺が女装をするという事で渋々承諾した・・

多分この村は俺と関わりのある場所なんだろう・・・

セフンの自分への執着は嫌というほど感じていた
「テヨン」という名前を付けてもらい
あの地獄のような闇市から救い出してもらった恩義があって
何度か求められれば肌を重ねる事もあった

5年も一緒にいて情が涌くと言う事もある
でもセフンは・・・あいつじゃない・・・
あいつ・・・あいつ・・って?
俺の求めているのは・・・俺の求めているのは誰?

テヨンは記憶の鍵を探そうと考えを纏めようとしていたが
堂々巡りで収集が付かないために諦めた
すでに寝息を立てているセフンの姿を確認し
自分もベットの中に潜り込んだ・・・・



続く

運命 9

[運命] 9



ガリガリガリ・・・

ちくしょう・・・もうすぐだ・・・
もうすぐ穴が開く・・・
俺の数年間の想いが・・・もうすぐ・・・

「俺・・・もう来れないかもしれない・・・」

え? いやだ・・

「軍事訓練に行かされるんだ」

いやだ・・・離れたくない・・会いたい
俺たちまだ顔を合わせた事がないじゃんか・・・

あとちょっと・・あとちょっと・・穴が開くんだ・・・

だから・・・待って・・・行かないで・・・いやだ・・・

俺は・・〇〇に・・・会いたい・・どこかに行かないで・・



「いやだ~!!!!!!」

テヨンの大声でセフンは驚いて目を覚ました

「どうした?」

テヨンのベットに駆けつけるとテヨンは泣きながら叫んでいる

「行かないで・・・もうすぐ・・会いに行くから・・・」

セフンはまだ夢の中のテヨンを
優しく抱きしめると
耳元で「大丈夫だよ」と言い続ける

テヨンは安心したかのように又夢の中に戻って行った


セフンは壁の取り壊しが今日だと思い出すと
自分が「テヨン」と名付けた青年の
記憶がよみがえるのも近いのではないか・・
そう思えて小さくため息をついた






「タオ・・お前本当にルハンに似た人見たんだな?」

「うん・・背の高い綺麗なお兄さんと一緒にいたよ!!!
るうちゃんって声かけたけど・・・タオの事見なかった」

「女性って言ってたけど・・ルハンの姉妹とか?」

レイがお茶をいれながらクリスに言う

「うーん・・俺たち自身・・親兄弟の事知らないからな・・
なんとも言えないけど・・・」

「塀の側にいたなら、今日の取り壊しの様子も見に来るんじゃない?
タオ・・・見かけたら僕たちに教えてね」

軽く朝食を終えると
クリスとレイとタオの3人は
シウミンのcaféに顔を出してから
塀の取り壊しを見守るために出かけて行った


シウミンも複雑な心境を胸の奥に抱えながら
ディオに店を頼んでチェンとスホと塀に向かった






「テヨン・・大丈夫か? 顔色悪いぞ・・ホテルに戻ろう?」

「いや・・・大丈夫だ・・ここに居る
どうしても見たいんだ・・・・」

セフンはテヨンをしっかりと支え
少し離れたところで取り壊しを見守る事にした


2人の立っていた場所に椎木が立っていて
クリス達の死角となっていた


村人などの見物人が多数集まった中
大きな機材が塀を壊し始める


バリバリバリ・・・・


「あっ・・・タオ達のおうちだ」
「クリス・・」
「焼け残ってたんだな・・・」


塀の向こう側には
かつてクリス達が暮らしていた孤児院の建物が
崩れかけそうになりながらも存在していた




「あれって・・・ルハンが住んでいた家?」
チェンが黙ったままのシウミンに話しかける

ルハン・・・・

シウミンは黙ったまま壊されていく塀を見つめていた





続く
プロフィール

宗文san

Author:宗文san
るーみん大好き宗文です。2人の幸せを祈ってます。ここでは2人の妄想話が主になります。BLが苦手な方は読まずにお帰り下さい。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR