一番大事な人 カイド編

[一番大事な人] プラネット番外編 カイド




ルーハンが珍しく風邪をひいて寝込んだ

いつもならシウミン少佐の屋敷に入り浸り状態だったが

シウミン少佐は海外任務があって

(某国での国際会議に首相のブレーンに紛れ込んでの情報活動)

その間クリスの屋敷に戻ってきている間に熱を出したのだ




「ルーハン・・お粥できたけど・・食べられる?」

ギョンスが声をかけるが、ぐったりとして返事もしない


いつも あーだこーだと口うるさいルーハンが静かだと

返って不気味な感じがする・・・・


「ルーハン・・・こんなに弱った姿初めて見るよ・・

いつもヒマワリの様に明るく元気だからね・・・

ルーハンにはこんな姿似合わないよ・・・」


頭の上の氷嚢を取換えながら、ギョンスは小さく囁いた

今では遥か昔のように感じるけど(実際には十年も経っていない)

ルーハン達と出会った当時をぼんやりと思い出す

あの時は自分とカイはどん底な生活をしていたっけ・・・



ギョンスとカイは同じ養護施設で育った

事故で両親を亡くし、親戚中をたらい回しにされた揚句

養護施設に預けられたギョンスと

若い母親の育児放棄のあげく

餓死寸前の所を助けられて施設に来たカイ

2人は元々歳も近く大人しい性格だったので

気づくと一緒にいる事が多かった・・・

施設内での揉め事や暴力ごとがあっても

部屋の隅で抱き合って

嵐が過ぎるのをじっと待つような子供だった


10年もの間2人は寄り添って施設の中でひっそりと暮らしていた


施設には18歳までしかいられない

高校の卒業と共に施設を出て自立しなくてはならない

カイの2歳上のギョンスが工場に就職し

寮生活を送る事が決まった


施設で迎えた最後の夜に

カイはギョンスにしがみついて離れない

「行っちゃいやだ・・・」と泣き続けるカイに

「置いていくわけじゃないよ・・頑張ってお金貯めるんだ

それまで待ってて」と

ギョンスがカイの頭を優しくなでていた


「お金をためて・・・一緒に暮らそう」

この頃はまだ2人はお互いの孤独さを埋めるために

相手を必要としていた・・・

孤独な魂同士が寄り添う・・・そんな感じだった


就職して最初の頃は休みの度に施設に来てくれたギョンスが

ある時から突然に連絡をくれなくなった

不安に思ったカイが

ギョンスの工場や寮に行っても会えない日が続く・・・


何度も様子を見に来るカイを

気の毒に思った同僚が

「今は寮に住んでない・・工場長の家にいるよ」と教えてくれた


絶対に俺から聞いたと言わないでくれ・・と何度も念を押した同僚の様子から

カイは何かが起きていると感じ取って

教わった工場長の家に向かった



時間は夜の8時を過ぎ周囲は暗くなっている

真っ暗な中カイはじっと待っていた

工場長の家は一軒家だったが明かりがついてなく

他に誰も住んでいる様子がなかった

カイは庭の陰に隠れてひたすら待った

待ちすぎて時間の感覚がなくなりかけた頃

小型の車が駐車場に到着した


腕をつかまれたギョンスが

中年の小太りの男性と共に降りてきて、家の中に入って行った

久々に見たギョンスは頬がこけてやつれた様子が見える


しばらく様子をうかがっていたカイは

2階のベランダの横の窓が少し開いている事に気づき

そこから中に侵入する事ができた



家の中で明かりがついているのは、リビングだけだった

だから2人がそこにいるのは一目瞭然で

カイは迷うことなく明かりを頼りに階段を下りていく

すると・・そこにはカイの想像を超える風景が広がっていた



豚がいた

肥えて薄汚い肉の塊が何かに覆いかぶさっている

カイが豚と思ったのは裸の工場長で

その工場長の下に組み敷かれていたのはギョンスだったのだ


ギョンスの瞳は何も映していないように生気を失って

体には殴られたような傷跡が垣間見える


カイは瞬時に何が起きているのかを理解した

そしてこみあげてくる涙を堪えるように深呼吸をひとつする・・・


周囲を見回すと自分のいる階段の横にキッチンが見えた

足音を忍ばせてキッチンに向かうとそこから包丁を探し出す


「ヒョン・・・俺の大事なギョンスヒョン・・今助けてあげるからね」

包丁を両手で握りしめると

ギョンスに向かって

腰を振り続けている男の背中に刃を突き刺した

贅肉が邪魔して中々深くは刺さらない

驚いた男はギョンスから体を離し

ものすごい形相で振り返った

その拍子にギョンスを突いていた男の

ぬめぬめした下半身が露わになって

それを目にしたカイの怒りが爆発した





身支度を済ませたギョンスと返り血を浴びたままのカイは

2人で手をつないだまま夜の街を逃走していた

2人は寮にも施設にも戻ることなく

そのまま男の家から持ち出した現金と共に

裏社会に逃げ込む事になった


数日後のニュースで男の死亡を知り

2人は真っ当な社会では生きていけないと覚悟を決めた

施設にいた時のように裏社会でも

2人はひっそりと寄り添って暮らしていたのだった


盗難品を横流しするルートを求めていたクリスと

そういう組織のパシリをしていたカイがたまたま知り合った

いろんな偶然が重なってカイとギョンスはクリス達の仲間になる


初めてルーハンと会った時に

彼はギョンスの話しを聞いて泣いた

同情とかではなく怒りの涙だった


そして工場長の死因を調べて

カイが犯人じゃない事を立証してくれた

(カイが刺しただけでは死んではいなかった。

幼児虐待の発覚を恐れた本人がピストルで自殺していた

その事実を2人は知らず自分達が殺したと思い込んでいた)


ギョンスは人生って不思議だな・・・としみじみと感じる

あのまま裏社会で暮らしていたら・・今頃どうなっていたんだろう・・・

組織のチンピラなんて捨て駒だから2人とも生きていないか・・・


「しうちゃん・・・」

ルーハンが寝言で愛する人の名前を呟く

「本当にルーハンの頭の中は少佐しかいないんだね・・・

少佐が一番大事な人なんだね・・・・」

ギョンスはルーハンの頭を優しく撫でると小さくほほ笑んだ

「僕も・・・カイの事しかないから・・同じだけどね」


ずっと弟だと思っていたカイ

その彼が自分が犯されていた時、捨て身で助けてくれた

自分を助けるためなら殺人も厭わない決心を知った時

ギョンスの気持ちも弟から大事な人へと変って行った



トントン


ノックの音に物思いに耽っていたギョンスが我に返った


「ルーハン・・・大丈夫か?」

空港からそのまま駆けつけてきた姿のシウミンが

カイと一緒に部屋に入ってきた


「少佐・・・どうして?」

体調を崩したルーハンはシウミンの仕事の支障になるからと

連絡はしないでくれとギョンスに言っていた


驚くギョンスにシウミンは

「タオからセフンに連絡あって、それで知った・・・

でも任務は無事に遂行してきたから大丈夫だ」と笑顔を向ける


コートを脱ぐと後ろのカイに預けて

ベットに眠るルーハンの頬に手を添える


「ギョンス・・・看病してくれてありがとう・・

こいつ我儘言わなかったか?」


想像よりも憔悴していたルーハンを見て

シウミンは辛そうに眉をひそめてから

愛おしそうにルーハンの唇にそっとキスをした

その感触にルーハンの瞳が静かに開く


「しうちゃん・・・仕事・・大丈夫?」

「ああ・・・もう終わったよ・・あとは側にいてやるよ」

熱でぼんやりしていたルーハンはその言葉を聞いてニッコリとほほ笑む


あっと言う間に2人の世界に入っていくルーハンとシウミンを見て

ギョンスは小さくほほ笑んだ

カイの手からシウミンのコートを取り上げると

近くにあったハンガーに吊るし、カイの腕を引っ張る



「後は少佐にお任せしていいんですね」

「ああ・・・ありがとうな・・」

「えっ・・・少佐・・ほとんど睡眠とってない・・・」


ガツッ・・・


何か言いかけたカイの足をギョンスが蹴飛ばした


「じゃあよろしくお願いします」と言い残して

ギョンスはカイを引っ張って部屋から出て行った




「ヒョン~痛いよ~なんで蹴っ飛ばすんだよ~」


「カイ・・・空気読んでよ・・・」


「?」


「ルーハンはずっとうわ言で『しうちゃん』って言ってたの」


カイはギョンスの言いたい事が分かって苦笑いをした

「本当にルーハンの頭の中は少佐しかいないんだね」


「うん・・僕と一緒」


ギョンスの言葉にカイは驚いて瞬きをした

「僕もカイしかいないよ・・・・僕の一番大事な人・・・」

「ギョンスヒョン・・・」


照れ屋のギョンスはあまり甘い言葉を言わない

ギョンスの気持ちは十分に分かっていても

言葉にして言われ慣れてないカイはフリーズ状態に陥ってしまう


何も言わないカイにギョンスは心配そうに下から見上げた

見上げた顔があまりにも可愛らしくてカイの心臓が爆発寸前となる


うわっ!!!!


カイはギョンスをお姫様抱っこすると

下ろせと暴れるのも構わずに屋敷の中を自室に向かって走る


「ヒョンが可愛い!!!今すぐギョンスを食べたい!!!」

その言葉にギョンスは恥ずかしそうに頬を染めて

カイの胸に顔をうずめた



ギョンスを抱き抱えたカイが廊下を走り去った後

リビングから人影が現れた



「クリス~しょーさ帰ってきたみたいだね」


「カイが空港まで迎えに行ったみたいだからな」


「るうちゃんの部屋に直接行ったのかな?」


タオがルーハンの部屋に行こうとするのに気づいたクリスが

「ば・・だめだ・・今行くな・・」と慌てて止める


「なんで~????タオもしょーさに会いたい~」

(今邪魔したらルーハンにぶっ殺されるぞ・・)

クリスは小さく舌打ちすると

この場をなんとか乗り切るために必死で思考を巡らせた



「あっ!!!!!この間お前が行きたがっていたケーキ屋!!!!

今日からスペシャルメニューが登場だそうだ!!!!

連れて行ってやるから食べに行こう!!!!」


「えーマジ???? やったぁ~!!!!クリス大好き!!!!!」


タオが大はしゃぎをする横で

クリスは小さく安堵のため息をついた・・・・







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Author:宗文san
るーみん大好き宗文です。2人の幸せを祈ってます。ここでは2人の妄想話が主になります。BLが苦手な方は読まずにお帰り下さい。

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