運命 3

[運命] 3




「るうちゃーん・・・るうちゃーん・・・どこにいるの?」

パンダのぬいぐるみを抱いたタオが

ルハンの名前を呼んで探している



「ルハンは・・・多分いつもの所にいるよ」

クリスがコーヒーを飲みながらタオの頭を優しくなでた

タオは安心したように笑って

胸元のパンダのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた

「るぅちゃん・・・最近あの場所でよく歌ってるよね~」



レイが何かを感じたようにクリスの方を向いた・・・

「今日は見張りが来そう・・・ルハンに注意してくる」


「いや・・レイ・・・大丈夫だ・・ルハンは・・・

それよりお前が見つかるだろう・・・・ここに居ろ・・・」

クリスはそう言ってほほ笑むと読みかけの雑誌をめくる


クリス達が住んでいる所は

身寄りのない子供たちが住んでいる孤児院


それはあくまでも表向きの姿で

実際はスパイ養成所だった

独裁国家のこの国で

身寄りのない子供たちは恰好の「鉄砲玉」だった

生きていくために子供たちは

過酷な訓練を余儀なくされる

将来使い捨てにされるのにも関わらず・・・・



最年長のクリスが16歳

レイが14歳

ルハンが11歳

タオが6歳

たまたま同部屋になったこの4人は器用さもあり

実技は養成所の中でも優等生の部類に入っていた


しかしもともとの気質のためか

スパイ要員としての洗脳は上手くいってなかった


頭の良かったクリスと勘の鋭いルハン

本能的に大人の考えを察知できるレイ

3人の言う事だけ大人しく聞くタオ


他の子供たちとは少し違った考えを持っていたが

それをうまく隠して過ごしていた



クリス達の部屋の南側には今では荒廃した庭園跡があり

その向こう側には塀が連なっている

大人でも登れない高さでそびえたっていて

もちろん子供は訓練を受けてるクリス達でも無理だ

その為か塀の近くまで行ってもそれほど叱られる事はなく

ルハンはお気に入りの場所を見つけて

1人になりたい時にはその場所で歌を歌って過ごしていた




その日は満月が綺麗な夜だった

夜中に抜け出して月をながめていると

日々の訓練の苦しさや辛さを忘れる事ができそうだった

月の光を浴びてすべてが浄化されるような気持になる


気分よく歌を歌っていると突然塀の向こうから音がした


誰かがいて塀を叩いている

良く聞くと叩き方が信号のようだった

訓練の一つとして信号解読もあったので

ルハンにはすぐに理解できた


『歌』『上手』


塀の向こう側に誰かがいて自分の歌を聴いていたんだ・・・

そしてそれを上手だと褒めてくれている・・・

塀の南側にも国があると聞いていたけど・・・こんな近くにいるなんて・・


ルハンは驚いたけど警戒心よりも好奇心の方が勝って

『ありがとう』と叩き返した


その後も単語の羅列の信号が送られてきて

ルハンは楽しくなって返信を繰り返す



~♪

遠くから指笛が聞こえてきた

クリスから戻って来いという合図だった

気づくと真上にあった月も

もうだいぶ下がってきている




『次』『満月』『同じ』『待つ』

そう送ると相手から

『満月』『待つ』と返信がきた


ルハンは信号の内容のたどたどしさから

相手は自分と違って素人だろうと推測した

それでもどんな相手なのか想像するとワクワクする


この時からルハンは塀の向こうの人物と

満月の夜限定で通信を続ける事になった

お互いに空振りの時もあったけど

月に一度は信号という会話を交わすことができた



そして気づくと5年という歳月が過ぎていった



続く
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るーみん大好き宗文です。2人の幸せを祈ってます。ここでは2人の妄想話が主になります。BLが苦手な方は読まずにお帰り下さい。

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